愛知県稲沢市在住の【中小企業診断士✖️IoTプロフェッショナルコーディネーター】が、ものづくりの楽しさを簡単にやさしくお伝えする《いなきたものづくり・がちゃラボ》です。
今回はIoT製品やシステムに関わる人材のお話です。以前の記事でIoTのシステムを開発するためには、4つの分野の技術が必要です、とお伝えしました。ただし、それらを兼ね備えている技術者は少ないですよーとも書いています。
では、実際に各企業での人材の採用、確保はどのような状況でしょうか。
IoT製品、システムで必要となる4つの技術
以前の記事で、IoT製品やシステムに関わる技術者には、次の4つの技術が必要になるとお伝しました。
- ソフトウェアに関する技術
- ハードウェアに関する技術
- 通信、ネットワークに関する技術
- データに関する技術
またこれら⑷つの技術を同時に全て備えている人は、滅多にいないとも書きました。
その理由は?皆さんはどんな事を学んできましたか?
学生時代、皆さんはどのようなことを中心に学ばれましたか?大学に行かれた人は、何学部?また、何を先行されていましたか?
私は中学を卒業してから国立の工業高等専門学校、通称高専に通っていました。そこでは、教科書を使った座学だけでなく、実験や実習を通して幅広く学びました。主にハードウェアに関する技術が中心でしたが、ソフトウェアに関しても学びました。
C言語も扱いましたが、覚えているのはアセンブラが難解だった事です。ld命令があってst命令があって…とよく理解できなかったことを覚えています。なので卒業研究はC言語とかVBで進めてました。
学科の目指すところとしては、社会に出ても役に立つように幅広く教えようとしていたんだと思います。ロボットに関する技術も学びましたし、工場で旋盤を使ったり、アーク溶接も学びました。
しかし、ネットワークに関する授業は、1つもなかったなーと思います。電力会社の人が外部講師として来ていましたが、電力網とか通信に関する話は1つもありませんでした。確か原発の話だったかな。
データに関する授業もありませんでした。
このように幅広く教えようという方針の学校であっても、前掲の4つの技術を全て教えることはありませんでした。よって、企業がIoTに強い人材を新卒で採用したい、と思って条件に上記4つの技術を書いたとしても、もなかなか応募されないと思います。
企業の人材確保の状況
さて、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が『IT人材白書 2017』としてまとめた報告書には、企業のIoTやAIなどに関する人材の確保状況がまとめられています。
システムを使う側の企業の状況
これによると、ユーザー企業(サービスを使う企業)の実に7割が確保できていない、やや確保できていないと回答しています。確保できていると自信を持って回答した企業はたったの1.6%だけという結果でした。
ユーザー企業のデータなので、製品やシステムを買って使う企業の話です。「これが欲しい、あれが欲しい」と思って、社長さんが買ったとします。あるいは、すごい効果があると勧められて、IoTシステムを導入した会社があったとします。
でも、社内に使える人材がいないわけです。買ったはいいけど扱えない、そんな状況もあるわけです。なぜなら7割のユーザー企業は、使える人が不足しているとデータが示しているからです。
もったいないですねー。
せっかく高額な製品、システムを買っても使えないのでは、宝の持ち腐れですね。ただ、この買っても使えない状態は、人がいないという事よりも別の理由であることの方が多いです。また機会があれば書きますが、何をしたいか、どんなデータを取得して何を見たいかという、導入設計ができていないことの方が、【使えない】という理由としては多いのかなと感じています。
システムを開発する側、提供する側の状況
先程は、IoTシステムを使う側、ユーザー企業の状況をまとめました。では、次にシステムを作る側、開発をして提供する側の状況を見ていきましょう。
再掲となりますが、各企業の人材確保の状況です。IT企業では、やや確保できていない、確保できていないの割合が58.1%となっています。そしてネットサービス実施企業では58%ということで、2つの業界ではほぼ同じ数字となっています。
実に6割の企業が、「足りない」と言ってる現状があるということですね。
もともとIT企業やネットサービス企業では、ソフトウェアに強い人材が集まりますので、ハードウェアに関する知識が少ないのではと思います。
私の会社でもソフトウェア職、プログラマーとして採用された人材は、ハードウェアに弱い傾向があります。それはそうですね、専門で習っていないのでその知識を求めても無理な話です。オームの抵抗やフレミングの左手の法則くらいは知ってますが。
システムを開発する企業の場合、その技術者がいないということは致命的です。製品を開発できないことになるため、世に製品をリリースできず利益を得ることができないためです。よって、ユーザー企業の7割という数字よりも、IT企業やネットサービス実施企業の6割は、その影響が大きいといえます。
このように、IoTやAIは盛り上がりを見せていますが、使う側でも作る側でも人材が不足しています。
まとめ
以上のように、世界中で話題となっているIoTですが、日本では知識を持った技術者が少なく企業で奪い合うような形となっています。こうしている間に、海外の企業に技術でも先行され、また人材が引き抜かれたりして、後塵を拝す状態になると予想されます。
ソフトウェアプログラマやハードウェア設計者の待遇を改善して、競争力を高めていく必要がありますね。
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